今回は・・・
というご用命を頂きました。
常に不具合は発生しており、症状を見ると、普通の整備士は『あ・・・これは一発死んでるな・・・』と、直ぐに気付く症状です。
ガソリンが燃焼する部分がこのセレナの場合は4つあるのですが、そのうちの一つが機能していない状態ってことですね。
問題は何が原因で、1気筒失火しているのかなんですが、最近の車は点火系も燃料系も診断が困難なケースが多く、なかなか100%コイツが悪いと絞り込める事が少なくなってきています。
とはいえ、修理する時に当てずっぽうでお客様に部品交換を勧めるわけにも行かないので、限りなく100%に近づける診断を行っていきます。
それでも100%では無いんですけどね・・・
目次
エンジン警告灯点灯の原因を探求
お預かりしてから症状は出っ放しです。
修理する側にとってこれほど良い条件はありません。
怖いのは触っているうちに症状が治まってしまう事。
不具合を申し出た際に、整備士にこのような事を言われた方も多いかと思います。
『症状を確認出来ませんでした。様子を見て下さい。』
という整備士の伝家の宝刀を(仕方なく)繰り出さなければいけなくなるのです。
症状が治まっただけで、根本的には何も解決しません。
それどころか、次いつ再発するのか、このまま乗っていて大丈夫なのかすらアドバイス出来ない最悪のケースです。
そうなったら、推測で交換を提案するか、このまま乗って様子を見て貰うかの2択になってしまいます。
なので、故障している状態が続いているというのは、整備士にとって修理を行う上で非常に良い条件なんですね。
さて、前置きはここまでとして、まずスキャンツールで故障コードを表示させてみましょう。
『♯3シリンダーミスファイア』
3番シリンダーの燃焼が正常に行われていないよ。と車が教えてくれています。
整備士はこの故障コードを元に、どのあたりが悪いのかを推測し、ピンポイントで不具合箇所を特定していく診断に移っていきます。
ちなみに、この故障コードから推測できる故障個所としては
推測できる故障個所
- イグニッションコイル・スパークプラグなどの点火系
- インジェクターなどの燃料系
- エンジンコンピューター及びハーネスなどの制御系
- エンジン本体
あたりでしょうか。
考えられる不具合系統でおおまかに分けるとこの4つぐらいと思うのですが、この4つの可能性レベルは全部が全部均等ではありません。
というのも、車として壊れやすい箇所、壊れにくい箇所ってあるわけで、考えられる箇所だからといって、全てをしらみつぶしに診断していったのでは時間が足らなくなります。
日が暮れてしまいます笑
ここからは今までの経験を考慮して、消去法で一番可能性が高いと思う箇所に当たりをつけて診ていく感じになりますね。
例えば、エンジンのコンピューターやエンジン本体が悪いかと考えると今回の症状だと可能性はかなり低いと思うんですよね。
極端に古い車や、雨漏れのある車などで無い限り、可能性としては少ないと考えても良いと思う。
そして、修理・部品交換するのにも高額になる為、とりあえずは後回しにしても良いと思います。
次に燃料系と点火系どちらが怪しいかと考えるわけですが、実は割合で言うと点火系の方が圧倒的に故障の事例が多いわけです。
ただ、燃料系が完全なシロかというとそう言い切れるわけでもありませんので、簡単な判別方法としてインジェクターの作動音を聞いてみます。
聴診器をインジェクターに当ててみると、『カチカチカチ』と作動音が聞こえるんですよね。
作動している=燃料を正常に噴射しているわけでは無い
とりあえず通電はしておりインジェクターは作動しているっぽいまでの判断にはなります。
ここまで来ると点火系が限りなく怪しいわけで、故障事例の割合からしてもイグニッションコイルかスパークプラグのどちらかでは無いかと考える事が出来ます。
本当はですね、この段階でイグニッションコイルもしくはスパークプラグを別の気筒と入れ替えて、症状が別の気筒に移るかどうかの確認をして、最終的な判断をしたいところ。
なのですが、このエンジンは御覧の通りインテークマニホールドがヘッドカバーの上側を覆っているので、点火系にアクセス出来ないんですよね。
で、残る切り分けとしては、『スパークプラグ』をいつ変えてるのか。また、どのスパークプラグを使用しているのか。の記録が残っていると、参考に出来るわけです。
ちなみにこの車両のスパークプラグは半年程前に私が交換しております笑
10万キロに一度交換すれば十分なので、ほとんどの人は1台につき1回変えるか変えないかぐらいだと思う。
なので、交換時期も使用しているプラグの種類も把握しているので、今回は♯3イグニッションコイルの不具合の可能性が極めて高いと判断したわけであります。
世の中にはコイルに当てると良否を判断してくれる道具もありますが、私は使った事は無いんですよね。
やっぱりあるとこういう時便利なんでしょうかね。
イグニッションコイルアナライザーっていうらしいですね。
ぶっちゃけ使わなくても何とか仕事出来ているんで、この先も手に入れることは無いような気がしますけど、気にはなっています。
修理の見積もりを作成→1本交換するか全部交換するかを考える
で、お客様にお見積りを作成して連絡するわけなんですが、イグニッションコイルってあと3本同じ部品が付いているんですよね。
今回故障していると思われる1本だけ交換するのか、それとも予防として4本まとめて交換してしまうのか。
工賃は1本でも4本でも同じです。
単純に部品代が1本分か4本分かの違い。
これはお客様が決めて良い事です。
今回の件で言えば、1本だけ交換すれば不具合は直ると思います。
ただ・・・もし来月また同じ症状が出たら・・・?
と、考えると今回4本交換しておけば、1回分の工賃で済むわけですね。
イグニッションコイル1本の金額はセレナの場合は定価9200円。税別ですよ。
工賃は約1万円弱。
悩ましいですよね。
修理するのに、出来るだけ安くしたいっていう気持ちは凄いわかるし、私も出来るだけ安く修理してあげたいです。
で、お客さんと相談した結果、今回は1本だけ交換する事に。
1本と4本だと3万円くらい違いますからね。
当社は基本的には純正品の使用になるわけなんですが、それなりに名前の通っている日立やNGKなどのメーカー品あれば社外品を使用しても特に問題は無いと思います。
社外品を使用する点で気をつけたいのが、1本だけ社外品に交換するのは避けたいという事ですね。
部品商さんからの情報なんですが、コイルに関しては社外品を使用する場合は、4本全て社外品にしないと不具合が生じる事があるそうです。
結構1本での販売が多いので、注意したいところです!
そんでもってプラグ交換も、コイル交換も実は作業内容はほとんど同じなんですよね。
スパークプラグ未交換でコイルを交換する場合は、ついでにプラグも交換しておいた方が工賃的にお得です。
C26プラグ交換
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[車検] C26 セレナ スパークプラグ交換
続きを見る
上の記事はC25ではありませんが、C25もC26もやることは大体同じです。
イグニッションコイル交換→交換後のエンジンの状態を確認する
1本だけ交換しました。
日本全国どの整備士が見てもわかるように、マーキングしておきます。
1本だけ新しいイグニッションコイルが無駄に交換されることの無いようにです。
まあ、見ればこれだけ新しそうだなってわかると思いますけどね。
次にこの車のこの部分触るのが必ずしも私とは限らないと思いますし、もしかしたらお客さんが急な転勤や出先での修理もあるかもしれない。
さて、コイルを交換して本題の不具合が直るかどうかが問題です。
今回は、診断内容通り問題無く修理は完了です。
吸気系の部品を外したりしたので、作業後にデータモニターにて異常な数値が出ていないかチェックしておきます。
吸入空気量学習した後の回転数も正常、空燃比補正値も100%でOKですね。
この数値を見ると、エンジンの状態がわかるんですよ。
燃料が濃い状態なのか、薄い状態なのか、空気が多いのか少ないのか・・・などなど。
面白いですよ、データモニター眺めるの笑
今回は交換しました→直りました。
だけでは無く、診断し難い箇所をどのように故障箇所を特定しているかを記事にしてみました。
考え方は整備士さん、工場さんそれぞれの考え方があると思うので、全然違うやり方で修理している整備士さんも沢山いると思いますが、今回は私はこのようにして仕事を進めました。
この仕事作業も大事ですが、『不具合箇所を特定する』診断が非常に難しいです。
私は昔から誤診断する事って少なくて、修理したけど直らなかったーって事は指折り数える程度なんですけど、診断って神経つかいますよね。
どんな些細な修理でも直った時はホッとします。
今回も無事に直ってよかったです!
今回の作業 | 費用目安 |
エンジン不調故障診断 | 3000円~ |
イグニッションコイル交換 | 22000円~(工賃・部品代込み) |
注意ポイント